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病めるひとのうた

  • 執筆者の写真: minus888
    minus888
  • 2017年4月25日
  • 読了時間: 1分

 東京の、駅の端にはいつからかあおいライトがついている。上りは武蔵野側に、下りは東京駅側に、丁度列車が侵入してくる方だけが、あおあおと照らされている。血迷ってしのうと人よ冷静になれと、だから列車が最高速で滑り込んで来る場所だけに、そのためだけにあおく光っている。

 かなしい人は、あおい光でも眺めたら、気持ちが軽くなったり、また生きようと思えるようになるのかしらと、ホームの端っこに立って眺める旅客のない駅。

 わたしは、東京に生まれて東京に育ち、田舎には情も郷愁もない人です。私のあこがれは、たとえば夜を切り裂くような常昼の光にあるのです。人っ子ひとり、野良犬も歩いていないようなところをも、眠らぬ街とせんと照らす常夜灯。交通整理をし続ける信号を、律儀に守る帰路の人。無人のホームを照らす自殺防止のあおい光。それらが燦然一体として、それはもう病的に、東京の人間から夜を奪うように光っているのを、いとしく思う。田舎を恋するように、都市を愛する。

 あおい光に目を細める。夜中にいきづく人の目の、くらさと寂しさ、陽炎を帯びた病のいろ。その人を殺さぬように、あおいひかりが煌々と、つめたくあたたかく、君よ死ぬなと、線路に飛び込んでくれるなと。寝ずの見張り。あおいひかり。


 
 
 

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