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夕闇の落ちかかる橋の上を

北から南へぞるぞると

病人の群れが歩いております

地下鉄に潜る階段と合流し

背広の人とまじりあい

工事や駅やネオンサインの電燈が

川のお暗い深さをひからせる

 

誰もその方を見ないまま

春の香はまだ遠い南風が

鉋のごとく頬を削ぎ

肌を削ぎ服を削ぎ

ひゅるひゅると木屑のようにかるくして

夜の煌々たる闇へ吸い込まれ

川のうわべを彷徨っている

 

群れを歩くわたしとは

無垢材のように白くなめらかにつやのあるにんげんだろう

みよ削がれた果てには純粋なる無防備がある

 

教会の鐘つきの気がくるい

しろい材木の群れはみな川に飛び込んで

ぷかぷか浮かびながらあらわれて

 

病人の群れは家になる

土台になる

そこで人が暮らす

 

2017.02.06

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