無題
- minus888

- 2017年4月22日
- 読了時間: 1分
悪人よ
友よ
何故その家に押入らない
特別な道具は何もいらない
彼の家のおんなは
窓の鍵を開けたままにしておく悪癖がある
幼少の頃から病弱で
タオルケットを積み上げた床に伏せ
ある日は酔客が酒瓶を投げ捨てるのを
学徒達が喧騒と共に過ぎ行くのを
花の舞い込む窓辺
飛ぶ鳥の影が横切るのを
ただ見ている
今日は硝子の滴る豪雨の中
定刻通りに列車が線路の上を滑るのを
かなしい口笛のような音を聞き
薬のあるテーブルに這って
薄めた酒を口に含む
友よ、無力なあのおんなならば
君は容易く強盗に入ることができるだろう
引き出しの中に二万円がある
流し台に包丁がある
痩せた無防備で弱々しい
呼吸さえひそやかなおんなだ
豪雨がアスファルトに叩きつける音が
浮世の何も彼も洗い流すことを望み
死の訪れをただ待っている
悪人よ
彼女を殺せ
彼女を殺してやってくれ
そのちいさくも必死な欲望のために
友よ
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