手紙
- minus888

- 2017年3月25日
- 読了時間: 2分
前略
貴方はどちらのどなたでしょう。
私が心酔して、身も心も預け切って油断することができるような、そうして私の拙いお喋りを聞いてくださるような、優しく繊細な人であれば好いと思います。
貴方と出逢えないので、私はとても寂しいです。貴方のことを夢に見ることだってできません。貴方は気まぐれに私の空想の中に現れて、見つけてご覧と私をお試しになるのですが、何の手掛かりもないので、私はただひとり、自分の中に淀むあんまりな心許なさを抱えて、悲しい気持ちでいるばかりです。
私の近況を報告致します。あれほど嫌がっていた仕事だのに、計画が潰えてしまってみるととても寂しく、来月から仕事の宛てもないし、住む宛てもありません。貯金だっていずれはなくなります。貴方は今すぐ私の傍にきて、この益体のない愚痴のような不安を、苦笑でもってうんうんと頷いて、私の後ろ頭を撫でてくださらなければならない。それなのに貴方はいない。貴方は残酷で、意地悪です。貴方はどうして私に会いに来てくださらないのか、そればかりを考えます。もし嬉しいことがあっても、私はそれを誰に報告すれば良いというのですか。私には貴方しかいません。空想上に住んでいる、優しくて私を愛してくれる貴方だけです。
貴方は優しいくせに、私が泣いていることだってわからないし、私が今どんな顔で手紙を書いているかも知らずに今日を一日過ごしている。春先の日差しを見上げて、海の寄せ返す音でも聞いているのです。遠くに列車が走る音を聞く。
貴方は誰ですか。どちらにお住まいですか。お便りください。今ならまだ、これまでの意地悪を許してあげます。何もなかったふりをして、貴方に抱きついて、貴方に頼り切って、悲しいことと嬉しいことをひとつひとつ報告して差し上げる。
お返事ください。できるだけ、大至急。
草々
コメント