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緊張の糸

  • 執筆者の写真: minus888
    minus888
  • 2017年3月14日
  • 読了時間: 2分

が、プツンと音を立てて、切れた気がする。私は自分で思うよりずっと、長いこと怖ろしく思っていたのかもしれない。

今日とうとう、予てから心配していた通りに、事業予算の打ち切りが決まった。AMEDからの通知はもっと前にあったし、気配といおうか跫といおうか、そんなものは二月ごろから戦々恐々と私達の背後に迫っていて、ただ先生が見て見ぬ振りをしたがったから、私達も目を瞑って脅威に背を向け棒立ちになっているよりほかなかったようなもの。

ずっと素知らぬふりしていたツケが回ってくる。明日の会議で身の振り方を決める。もう、明日一回きりしか機会がない。2度と同じ顔触れの会議は行われない。

私の面倒も見られなくなる。1年11ヶ月の丁稚奉公に、呆気ない幕が引かれる。

何かの役にたてていたのかわからない。私は教室で取るに足らない存在だった。それでも私の整えた資料が公の場に貼り出され、私の描いたものが各地の病院に配信されたのは、些細だけど嬉しかった。何の結果も残らぬ打ち切りの試験でも、今の先生は私のこれまで出会った中で有数の天才で、もしかすると二度巡り合わない類の人かもしれない。

別に学者になりたかった訳ではない。私が今ここにいるのは不可抗力だ。

それでも学者になる道が整う日が来るのだとしたら、私はこの2年間の幽かな研究題目に大いに感謝すると思う。学者にならずに済んだなら、それでもその世界を見せてくれたことに対して、感謝すると思う。

久しぶりに冷凍庫から鮭の切り身を出して、解凍して、ほぐして米と炒めた。3ヶ月ぶりくらいに自宅で人間並みのものを食べた。それからお湯を沸かして、クナイプのカミーレを溶かして浸かった。肌の乾いたところに乳液を塗って、それから、退職願に判をついた。

明日の会議はきっと紛糾する。


 
 
 

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